チャオ通信

  • 巨大食道症

    犬のはなし 2019年01月07日

     

     

    巨大食道(きょだいしょくどう)症は、食道が何らかの原因で拡張する病気で、

     

     

    食べたものを胃に送り込めなくなり、吐くといった症状を引き起こします。

     

     

    先天性の場合と後天性の場合がありますが、

     

     

    後天性の場合には、神経や筋肉の病気(重症筋無力症など)、

     

     

    食道の閉塞性疾患(ガンや異物など)などから続発することが多いようです。

     

     

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    食べたものをすぐに吐いてしまう「吐出(としゅつ)」が起こりますので、

     

     

    徐々に痩せてきたり、誤嚥すると気管支炎や肺炎を起こすこともあり、

     

     

    酷いケースでは進行性に悪化し、死に至ることもあります。

     

     

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    診断は上の写真のように造影剤を飲ませてからレントゲン検査を行います。

     

     

    造影剤のたまっている部分が拡張した異常な食道です。

     

     

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    今回のワンちゃん(ダックス)は重症筋無力症に続発した巨大食道症でした。

     

     

    原因となる疾患があればその治療を行いますが、

     

     

    「吐出」を防ぐために、ワンちゃんを立たせた姿勢で食事を与え、

     

     

    食後もしばらくは立たせたままにする必要があります。

     

     

    また、肺炎などがあれば抗生剤などのお薬も必要になります。

     

     

    発症のメカニズムが不明なことが多く、治療が難しい病気です。

     

     

     

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  • 腎臓(じんぞう)腫瘍

    犬のはなし 2018年11月30日

     

     

    腎臓は老廃物を体から追い出したり(尿)、血圧の調整をしたり、

     

     

    血液をつくる司令塔の役目…など様々な働きをする臓器です。

     

     

    今回は、数日前から食欲がない、吐くというワンちゃんです。

     

     

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    検査で、腎臓にできた腫瘍(点線枠 | 矢印)が見つかりました。

     

     

    腎臓腫瘍では、食欲不振、嘔吐、腹痛などが見られることがありますが、

     

     

    症状がなく健康診断などで偶然見つかることもあります。

     

     

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    腫瘍は生検などの病理検査で診断します。

     

     

    治療は腫瘍によって様々ですが、手術が必要になることもあります。

     

     

    今回のワンちゃんは腫瘍が大きく、破裂、出血の危険性を考慮し、

     

     

    反対側の腎臓に異常がないことを確認したのち、

     

     

    腫瘍のある側の腎臓全体を切除する手術を行いました。

     

     

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    (点線枠が腫瘍。大きくて表面がもろい)

     

     

    幸い腫瘍は良性で手術後は元気に生活しています。

     

     

     

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  • 尿路結石

    犬のはなし 2018年11月07日

     

     

    <どんな病気?>

     

     

    腎臓で作られた尿は、尿路(腎臓→尿管→膀胱→尿道)を通り、体外へ排出されます。

     

     

    尿路に結石ができる病気が尿路結石症で、人と同様ワンちゃんにも起こる病気です。

     

     

    結石ができる場所によって、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石と呼ばれます。

     

     

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    数日前から元気、食欲がないというワンちゃんが来院されました。

     

     

    身体検査でお腹を触ると腹部が強く張っていて、

     

     

    膀胱の中に大量の尿がたまっている様子で、本人もぐったりしています。

     

     

    排尿したくても自力で尿を出せない状態のようです。

     

     

    尿を抜くために、陰茎の先から膀胱へカテーテル(細い管)を入れますが全く進みません。

     

     

    緊急的にお腹の外側から膀胱に細い針をさして尿を抜きました。

     

     

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    (尿道結石/黄色枠の小さな粒状)

     

     

    レントゲンとエコー検査で、尿道(陰茎から膀胱の間)と膀胱、

     

     

    それぞれに大量の結石が詰まっているのがわかりました。

     

     

    結石によって尿路がふさがってしまうと激しい痛みを伴い、

     

     

    閉塞が長く続くと腎臓の機能にダメージを与えます。

     

     

    また、細菌感染を合併すると高熱がでます。

     

     

    治療としては、外科的に結石を取り除く必要があります。

     

     

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    今回は、膀胱、尿道の一部をそれぞれ切開して、結石を取り除きました。

     

     

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    写真は取り出した結石の一部で、これの倍近い数の結石が、

     

     

    尿道に栓をするような状態でびっしり詰まっていました。

     

     

    これだけ詰まっていたら相当辛かっただろうと思います。

     

     

    幸い手術後は体調もすぐに戻り退院できました。

     

     

    結石は検査センターに提出して、その成分を調べてもらいます。

     

     

    結石の種類によっては、食事やサプリメントでの予防ができる場合もあります。

     

     

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    <結石ができる原因は?>

     

     

    尿路結石症全体のほとんどは原因不明です。

     

     

    尿中のカルシウム、シュウ酸、尿酸などの過剰、

     

     

    結石を抑制する物質(マグネシウム、クエン酸)の減少、

     

     

    尿路感染、尿路奇形、尿の停滞、動物性タンパク質の過剰摂取、水分摂取不足など

     

     

    多くの素因が複雑に関与していると考えられています。

     

     

    水分の摂取量が減る冬場は特に注意が必要です。

     

     

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  • 中足足根関節脱臼

    猫のはなし 2018年10月31日

     

     

    中足足根(ちゅうそく-そっこん)関節は「足の甲」の骨の関節です。

     

     

    猫でいうと↓の写真の部分(黄色枠)になります。

     

     

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    今回は自宅の高所から飛び降りた際に、

     

     

    後ろ足を着けなくなってしまった猫ちゃんです😿

     

     

    かかりつけの先生のご紹介で来院されました。

     

     

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    レントゲン検査で、後ろ足の中足足根関節を脱臼していることがわかりました。

     

     

    足の甲の骨の人差し指と中指に当たる部分が脱臼しています。

     

     

    ちなみに正常な子のレントゲンは ↓ のような感じです。

     

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    このままでは歩けませんので手術となりました。

     

     

    髄内ピンという装置で脱臼箇所を整復し、外固定(ギプス)をしました。

     

     

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    手術後はすぐに歩けるようになりますが、しばらく安静が必要です。

     

     

    脱臼部分が治った後、髄内ピンは取り外しました。

     

     

    とても性格の良い猫ちゃんで、治療もスムーズでした。

     

     

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  • 橈尺骨(とうしゃっこつ)骨折

    犬のはなし 2018年10月05日

     

     

    橈尺骨は肘から手首までの前腕部の骨です。

     

     

    橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)の2本の骨で構成されています。

     

     

    今回は室内で滑ったあとから前足をつけなくなった小型犬のワンちゃんです。

     

     

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    橈尺骨(手首に近い部分)が骨折しているのがわかります。

     

     

    折れた骨が皮膚を突き破ってしまいそうな危険な状態です。

     

     

    夜間に救急外来 で受診されたため、

     

     

    応急的にギプスで固定したのち、手術となりました。

     

     

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    インプラントを使って固定しました。

     

     

    翌日には足をついて少しずつ歩けるようになりました。

     

     

    インプラントは骨の治り具合を見ながら少しずつ外していきます。

     

     

    小型犬(とくにトイプードルなど)の橈骨尺骨は非常に細く、

     

     

    ソファから飛び降りたなどの些細な衝撃でも折れてしまうことがあります。

     

     

    ワンちゃんの骨折のうち、最も頻度が多いのがこの橈尺骨の骨折です。

     

     

    飼い主さんが抱いていて落下したケースも多く注意が必要です。

     

     

     

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  • 股関節脱臼(こかんせつだっきゅう)

    犬のはなし 2018年09月20日

     

     

    股関節は、大腿骨(太ももの骨)の上端にある球状の骨頭(こっとう)が、

     

     

    骨盤の寛骨臼(かんこつきゅう)と呼ばれるソケットにはまるような形をしています。

     

     

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    大腿骨頭が何らかの原因で寛骨臼から外れてしまうのが股関節脱臼です。

     

     

    今回は、ドッグランで遊んでいて突然後ろ足を激しく痛がりだしたワンちゃんです。

     

     

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    (点線枠内が脱臼した股関節)

     

     

    脱臼した股関節を、まずは手で元の状態に整復します。

     

     

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    一度脱臼した股関節は再度脱臼することがあり、手術が必要になることもあります。

     

     

    今回のワンちゃんは一度整復をしたのち、数日で再脱臼をおこしました。

     

     

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    ご家族の希望で大腿骨頭切除という手術を行いました。

     

     

    術後のリハビリは必要ですが、日常生活に不自由なく元気に生活してくれています。

     

     

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  • 看板犬’s 🐶

    チャオの仲間 2018年09月14日

     

     

    今回ご紹介するのは文字通り「看板犬」をしてくれているワンコです。

     

     

    院長の友人ご一家が飼っておられる、

     

     

    バーニーズの「ばんちゃん」とフラットの「せんちゃん」。

     

     

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    ばんちゃん、せんちゃんはとても賢く性格も穏やかです 🎶

     

     

    ヨダレ多めです!

     

     

    実はばんちゃんは、当院の看板のモデル犬をしてくれています!

     

     

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    (Google ビューにもバッチリうつってます)

     

     

    やれ肖像権だの著作権だのと権利関係にはやかましいこのご時世。

     

     

    ご家族は嫌な顔一つせずご協力してくださいました😭

     

     

    ありがとう!ばんちゃん、せんちゃん。

     

     

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  • 眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)

    猫のはなし 2018年09月11日

     

     

    まぶた(眼瞼)が内側に巻き込むことによって発生する病気です。

     

     

    “まぶた”や“まつ毛” が常に目の表面をこするため、角膜炎や結膜炎を起こし、

     

     

    痛みや不快感、目ヤニ、涙などさまざまな症状を伴います。

     

     

    写真の猫ちゃんは、両目がほとんど開けられず痛そう、とのことで来院されました。

     

     

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    (右目)

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    (左目)

     

     

    両目とも下まぶたが巻き込んでしまい、目の表面(角膜)に傷ができ、

     

     

    痛みから目を正常に開くことができなくなっています。

     

     

    とくに左目は傷の状態がひどく、角膜は白く濁り一部は黒く色素沈着をおこしています。

    (角膜黒色壊死症)

     

     

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    ちなみに下の写真は、正常な猫の目(まぶた)の写真です。

     

     

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    治療方法ですが…

     

     

    内反の程度が軽ければ点眼や“まつ毛”を抜くことで治療しますが、

     

     

    重度の内反症では、手術による“まぶたの矯正”が必要になります。

     

     

    写真の猫ちゃんは点眼治療を長期間続けたものの治りが芳しくなく、

     

     

    当院の 眼科外来 を受診され、ご相談のうえ手術となりました。

     

     

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    手術は両目のまぶたを同時に行いました。

     

     

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    (左目)

     

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    (右目)

     

     

    写真は手術後の目の様子です。

     

     

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    目もぱっちり開くことができ、角膜の傷もきれいに治りました。

     

     

    まぶたの様子がおかしい、上記の症状があるなどの場合には注意が必要です。

     

     

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  • 乳腺腫瘍(にゅうせんしゅよう)

    犬のはなし 2018年08月01日

     

     

    乳腺にできる腫瘍で、中高齢のメスのワンちゃんに多い病気です。

     

     

    胸やおなかに「しこり」ができます(複数できることも)。

     

     

    悪性の腫瘍であれば、出血や壊死を起こしたり、

     

     

    リンパ節や肺などへ転移する場合もあります。

     

     

    治療は、手術で腫瘍を切除する必要がありますが、

     

     

    悪性の場合には、抗癌剤や放射線治療が必要になることもあります。

     

     

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    写真のワンちゃんは胸から下腹部の広い範囲に、

     

     

    肉眼でもわかる大きなしこりが多数できていました。

     

     

    悪性の乳ガンで、リンパ節にも転移していました。

     

     

    他院で以前から内科治療を受けていたものの良くならず、

     

     

    高齢のため手術もできないと言われ、当院を受診されました。

     

     

    食欲がなく体重と元気も日に日に落ちていたようです。

     

     

    エコー検査で、おなかの中(卵巣)にも大きな腫瘍が見つかりました。

     

     

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    (右の卵巣の腫瘍)

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    (左の卵巣の腫瘍)

     

     

    腫瘍はおなかの中で転移して、腹膜炎をおこしています。

     

     

    ご家族と相談のうえ手術することになりました。

     

     

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    ( 卵巣の腫瘍)

     

     

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    (腸間膜に播種・転移した腫瘍)

     

     

    手術では、おなかの中の腫瘍を卵巣と子宮ごとすべて摘出し、

     

     

    乳ガンは左右両側の乳腺を腫瘍ごとすべて切除しました。

     

     

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    (手術後の様子)

     

     

    10歳を過ぎたワンちゃんですが、よく頑張ってくれました。

     

     

    手術後すぐに食欲は戻り、抗癌剤治療を受けながら、

     

     

    1年以上たった今も元気に生活してくれています。

     

     

    乳腺腫瘍は若いうちに避妊手術をすることで予防のできる腫瘍です。

     

     

    また、仮に腫瘍ができた場合でも「早期発見、早期治療」が大切です。

     

     

     

     

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  • 膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)

    犬のはなし 2018年07月17日

     

     

    膝のお皿(膝蓋骨)が、膝の正面の本来の位置からずれてしまう病気です。

     

     

    後ろ足を曲げたまま地面に着かない(跛行)、

     

     

    突然足をあげてキャンとなく(痛み)などの症状や、

     

     

    ひどい場合には足の形が変形してしまうこともあります。

     

     

    トイプードルやチワワなど小型犬に非常に発生の多い病気です。

     

     

    歩行時に「スキップ」や「ケンケン」するワンちゃんが多いようです。

     

     

    IMG_2656https://youtu.be/soJ9O3-n9aI

     

     

    触診やレントゲン検査などで診断が可能です。

     

     

     

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    (写真;両側の膝蓋骨(赤点線枠)が内側に脱臼している)

     

     

    症状(痛みや跛行)が続く場合には手術をおすすめしています。

     

     

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    (写真右;手術で本来の正面の位置に戻った膝蓋骨)

     

     

    手術は症状や重症度に合わせて上記の手技を組み合わせて行います。

     

     

     

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