チャオ通信

  • 胆石(たんせき)症

    犬のはなし 2019年04月06日

     

     

    胆石は、胆のうの中にできた結石のことです。

     

     

    肝臓で作られた胆汁(たんじゅう)と呼ばれる消化液は、

     

     

    胆のうで一時的に貯蔵、濃縮され小腸に排出されます。

     

     

    この胆汁が胆のうの中でうっ滞したり、細菌感染を起こすと、

     

     

    結晶化して結石(胆石)ができると考えられています。

     

     

    タマル クシュト 腹部RL

     

     

    ↑ は、うちの初代ダックスのおなかのレントゲンです。

     

     

    当時13歳で、食欲ムラや時折吐くことがあり、

     

     

    検査したところ大量の胆石が見つかりました。

     

     

    胆石や胆泥が、胆汁の通り道である胆管につまる、

     

     

    「胆管閉塞」のリスクがあると判断し、

     

     

    手術によって胆のうを切除することになりました。

     

     

    DSC00897のコピー

     

     

    切除した胆のうです。

     

     

    胆のうを開いてみると…

     

     

    クシュトのコピー

     

     

    50以上の胆石が出てきました。

     

     

    手術後は食欲も嘘のように出てきて、嘔吐もなくなりました。

     

     

    嘔吐は胆のう炎や胆管炎を繰り返していたことが原因だったようです。

     

     

    その後、4年頑張ってくれて17歳まで長生きしてくれました!

     

     

    DSC00920のコピー

     

     

    手術後の写真です。

     

     

    少し痛々しい感じがしますが、痛み止めの内服で、

     

     

    手術の翌朝には食事もとってくれました。

     

     

    人では胆石による「痛み」があるそうですが、

     

     

    ワンちゃんは痛みを表に出さないため、

     

     

    私たち家族が小さなサインを見逃さないことも大切かもしれません。

     

     

    ****************************************************

     

     

     

     

     

     

     

  • 橈尺骨骨折

    犬のはなし 2019年02月01日

     

     

    橈尺骨は前足の肘から手首までの部分の骨です。

     

     

    橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)の2本の骨で構成されています。

     

     

    人も同じです。wikipediaに載っています。

     

     

     

    スクリーンショット 2019-02-01 20.09.32

     

     

     

    今回は散歩中に突然、前足をつけなくなった小型犬のワンちゃんです。

     

     

     

    IMG_4357

     

     

     

    段差を飛び越えようとしたところ着地に失敗したようです。

     

     

     

    IMG_4358

     

     

     

     

    休診日に救急外来 で受診されたため、

     

     

    応急的にギプスで固定したのち、手術となりました。

     

     

     

    IMG_4362

     

     

     

    インプラントを使って固定しました。

     

     

     

    IMG_4365

     

     

     

    インプラントは骨の治り具合を見ながら徐々に外していきますが、

     

     

    インプラント全てを外す場合と、一部は残しておく場合と、

     

     

    骨折の状況や動物の年齢、性格などで決めていきます。

     

     

    手術に使用するインプラントは全て動物医療用のものです。

     

     

    IMG_4367

     

     

    小型犬(とくにトイプードルなど)の橈尺骨は非常に細く、

     

     

    ソファから飛び降りたなどの些細な衝撃でも折れてしまうことがあります。

     

     

    ワンちゃんの骨折のうち、最も多いのがこの橈尺骨の骨折です。

     

     

    飼い主さんが抱いていて落下したケースも多く注意が必要です。

     

     

    ****************************************************

     

     

     

     

     

     

     

  • 巨大食道症

    犬のはなし 2019年01月07日

     

     

    巨大食道(きょだいしょくどう)症は、食道が何らかの原因で拡張する病気で、

     

     

    食べたものを胃に送り込めなくなり、吐くといった症状を引き起こします。

     

     

    先天性の場合と後天性の場合がありますが、

     

     

    後天性の場合には、神経や筋肉の病気(重症筋無力症など)、

     

     

    食道の閉塞性疾患(ガンや異物など)などから続発することが多いようです。

     

     

    dog00

     

     

    食べたものをすぐに吐いてしまう「吐出(としゅつ)」が起こりますので、

     

     

    徐々に痩せてきたり、誤嚥すると気管支炎や肺炎を起こすこともあり、

     

     

    酷いケースでは進行性に悪化し、死に至ることもあります。

     

     

    20120327131953690001

     

     

    診断は上の写真のように造影剤を飲ませてからレントゲン検査を行います。

     

     

    造影剤のたまっている部分が拡張した異常な食道です。

     

     

    20120327132025240001

     

     

    今回のワンちゃん(ダックス)は重症筋無力症に続発した巨大食道症でした。

     

     

    原因となる疾患があればその治療を行いますが、

     

     

    「吐出」を防ぐために、ワンちゃんを立たせた姿勢で食事を与え、

     

     

    食後もしばらくは立たせたままにする必要があります。

     

     

    また、肺炎などがあれば抗生剤などのお薬も必要になります。

     

     

    発症のメカニズムが不明なことが多く、治療が難しい病気です。

     

     

     

    *************************************************

     

     

     

     

     

     

     

     

  • 腎臓(じんぞう)腫瘍

    犬のはなし 2018年11月30日

     

     

    腎臓は老廃物を体から追い出したり(尿)、血圧の調整をしたり、

     

     

    血液をつくる司令塔の役目…など様々な働きをする臓器です。

     

     

    今回は、数日前から食欲がない、吐くというワンちゃんです。

     

     

    IMG_2553 313--01_20170108_Pediatric-_Abd-U_0002

     

     

    検査で、腎臓にできた腫瘍(点線枠 | 矢印)が見つかりました。

     

     

    腎臓腫瘍では、食欲不振、嘔吐、腹痛などが見られることがありますが、

     

     

    症状がなく健康診断などで偶然見つかることもあります。

     

     

    313--01_20170108_Pediatric-_Abd-U_0001

     

     

    腫瘍は生検などの病理検査で診断します。

     

     

    治療は腫瘍によって様々ですが、手術が必要になることもあります。

     

     

    今回のワンちゃんは腫瘍が大きく、破裂、出血の危険性を考慮し、

     

     

    反対側の腎臓に異常がないことを確認したのち、

     

     

    腫瘍のある側の腎臓全体を切除する手術を行いました。

     

     

    IMG_2554

    (点線枠が腫瘍。大きくて表面がもろい)

     

     

    幸い腫瘍は良性で手術後は元気に生活しています。

     

     

     

    **************************************************

     

     

     

     

     

     

     

  • 尿路結石

    犬のはなし 2018年11月07日

     

     

    <どんな病気?>

     

     

    腎臓で作られた尿は、尿路(腎臓→尿管→膀胱→尿道)を通り、体外へ排出されます。

     

     

    尿路に結石ができる病気が尿路結石症で、人と同様ワンちゃんにも起こる病気です。

     

     

    結石ができる場所によって、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石と呼ばれます。

     

     

    *   *   *   *

     

     

    数日前から元気、食欲がないというワンちゃんが来院されました。

     

     

    身体検査でお腹を触ると腹部が強く張っていて、

     

     

    膀胱の中に大量の尿がたまっている様子で、本人もぐったりしています。

     

     

    排尿したくても自力で尿を出せない状態のようです。

     

     

    尿を抜くために、陰茎の先から膀胱へカテーテル(細い管)を入れますが全く進みません。

     

     

    緊急的にお腹の外側から膀胱に細い針をさして尿を抜きました。

     

     

    FullSizeRender-15

    (尿道結石/黄色枠の小さな粒状)

     

     

    レントゲンとエコー検査で、尿道(陰茎から膀胱の間)と膀胱、

     

     

    それぞれに大量の結石が詰まっているのがわかりました。

     

     

    結石によって尿路がふさがってしまうと激しい痛みを伴い、

     

     

    閉塞が長く続くと腎臓の機能にダメージを与えます。

     

     

    また、細菌感染を合併すると高熱がでます。

     

     

    治療としては、外科的に結石を取り除く必要があります。

     

     

    IMG_1066

     

     

    今回は、膀胱、尿道の一部をそれぞれ切開して、結石を取り除きました。

     

     

    IMG_1072

     

     

    写真は取り出した結石の一部で、これの倍近い数の結石が、

     

     

    尿道に栓をするような状態でびっしり詰まっていました。

     

     

    これだけ詰まっていたら相当辛かっただろうと思います。

     

     

    幸い手術後は体調もすぐに戻り退院できました。

     

     

    結石は検査センターに提出して、その成分を調べてもらいます。

     

     

    結石の種類によっては、食事やサプリメントでの予防ができる場合もあります。

     

     

    *   *   *   *

     

     

    <結石ができる原因は?>

     

     

    尿路結石症全体のほとんどは原因不明です。

     

     

    尿中のカルシウム、シュウ酸、尿酸などの過剰、

     

     

    結石を抑制する物質(マグネシウム、クエン酸)の減少、

     

     

    尿路感染、尿路奇形、尿の停滞、動物性タンパク質の過剰摂取、水分摂取不足など

     

     

    多くの素因が複雑に関与していると考えられています。

     

     

    水分の摂取量が減る冬場は特に注意が必要です。

     

     

    ******************************************************

     

     

     

     

     

     

  • 橈尺骨(とうしゃっこつ)骨折

    犬のはなし 2018年10月05日

     

     

    橈尺骨は肘から手首までの前腕部の骨です。

     

     

    橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)の2本の骨で構成されています。

     

     

    今回は室内で滑ったあとから前足をつけなくなった小型犬のワンちゃんです。

     

     

    IMG_3710

     

    IMG_3712

     

     

    橈尺骨(手首に近い部分)が骨折しているのがわかります。

     

     

    折れた骨が皮膚を突き破ってしまいそうな危険な状態です。

     

     

    夜間に救急外来 で受診されたため、

     

     

    応急的にギプスで固定したのち、手術となりました。

     

     

    IMG_3714

     

    IMG_3715

     

     

    インプラントを使って固定しました。

     

     

    翌日には足をついて少しずつ歩けるようになりました。

     

     

    インプラントは骨の治り具合を見ながら少しずつ外していきます。

     

     

    小型犬(とくにトイプードルなど)の橈骨尺骨は非常に細く、

     

     

    ソファから飛び降りたなどの些細な衝撃でも折れてしまうことがあります。

     

     

    ワンちゃんの骨折のうち、最も頻度が多いのがこの橈尺骨の骨折です。

     

     

    飼い主さんが抱いていて落下したケースも多く注意が必要です。

     

     

     

    ****************************************************

     

     

     

     

     

     

     

     

  • 股関節脱臼(こかんせつだっきゅう)

    犬のはなし 2018年09月20日

     

     

    股関節は、大腿骨(太ももの骨)の上端にある球状の骨頭(こっとう)が、

     

     

    骨盤の寛骨臼(かんこつきゅう)と呼ばれるソケットにはまるような形をしています。

     

     

    IMG_2607

     

     

    大腿骨頭が何らかの原因で寛骨臼から外れてしまうのが股関節脱臼です。

     

     

    今回は、ドッグランで遊んでいて突然後ろ足を激しく痛がりだしたワンちゃんです。

     

     

    IMG_2604

    (点線枠内が脱臼した股関節)

     

     

    脱臼した股関節を、まずは手で元の状態に整復します。

     

     

    IMG_2608

     

     

    一度脱臼した股関節は再度脱臼することがあり、手術が必要になることもあります。

     

     

    今回のワンちゃんは一度整復をしたのち、数日で再脱臼をおこしました。

     

     

    IMG_2606

     

     

    ご家族の希望で大腿骨頭切除という手術を行いました。

     

     

    術後のリハビリは必要ですが、日常生活に不自由なく元気に生活してくれています。

     

     

    ***********************************************

     

     

     

     

     

     

  • 乳腺腫瘍(にゅうせんしゅよう)

    犬のはなし 2018年08月01日

     

     

    乳腺にできる腫瘍で、中高齢のメスのワンちゃんに多い病気です。

     

     

    胸やおなかに「しこり」ができます(複数できることも)。

     

     

    悪性の腫瘍であれば、出血や壊死を起こしたり、

     

     

    リンパ節や肺などへ転移する場合もあります。

     

     

    治療は、手術で腫瘍を切除する必要がありますが、

     

     

    悪性の場合には、抗癌剤や放射線治療が必要になることもあります。

     

     

    DSC02978

     

     

    写真のワンちゃんは胸から下腹部の広い範囲に、

     

     

    肉眼でもわかる大きなしこりが多数できていました。

     

     

    悪性の乳ガンで、リンパ節にも転移していました。

     

     

    他院で以前から内科治療を受けていたものの良くならず、

     

     

    高齢のため手術もできないと言われ、当院を受診されました。

     

     

    食欲がなく体重と元気も日に日に落ちていたようです。

     

     

    エコー検査で、おなかの中(卵巣)にも大きな腫瘍が見つかりました。

     

     

    389--01_20170518_Pediatric-_Abd-U_0002

    (右の卵巣の腫瘍)

    389--01_20170518_Pediatric-_Abd-U_0001

    (左の卵巣の腫瘍)

     

     

    腫瘍はおなかの中で転移して、腹膜炎をおこしています。

     

     

    ご家族と相談のうえ手術することになりました。

     

     

    DSC02983

    ( 卵巣の腫瘍)

     

     

    DSC02980

    (腸間膜に播種・転移した腫瘍)

     

     

    手術では、おなかの中の腫瘍を卵巣と子宮ごとすべて摘出し、

     

     

    乳ガンは左右両側の乳腺を腫瘍ごとすべて切除しました。

     

     

    IMG_2702

    (手術後の様子)

     

     

    10歳を過ぎたワンちゃんですが、よく頑張ってくれました。

     

     

    手術後すぐに食欲は戻り、抗癌剤治療を受けながら、

     

     

    1年以上たった今も元気に生活してくれています。

     

     

    乳腺腫瘍は若いうちに避妊手術をすることで予防のできる腫瘍です。

     

     

    また、仮に腫瘍ができた場合でも「早期発見、早期治療」が大切です。

     

     

     

     

    *******************************************************

     

     

     

     

     

     

     

  • 膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)

    犬のはなし 2018年07月17日

     

     

    膝のお皿(膝蓋骨)が、膝の正面の本来の位置からずれてしまう病気です。

     

     

    後ろ足を曲げたまま地面に着かない(跛行)、

     

     

    突然足をあげてキャンとなく(痛み)などの症状や、

     

     

    ひどい場合には足の形が変形してしまうこともあります。

     

     

    トイプードルやチワワなど小型犬に非常に発生の多い病気です。

     

     

    歩行時に「スキップ」や「ケンケン」するワンちゃんが多いようです。

     

     

    IMG_2656https://youtu.be/soJ9O3-n9aI

     

     

    触診やレントゲン検査などで診断が可能です。

     

     

     

    IMG_2636-2

    (写真;両側の膝蓋骨(赤点線枠)が内側に脱臼している)

     

     

    症状(痛みや跛行)が続く場合には手術をおすすめしています。

     

     

    IMG_2653 IMG_2638

    (写真右;手術で本来の正面の位置に戻った膝蓋骨)

     

     

    手術は症状や重症度に合わせて上記の手技を組み合わせて行います。

     

     

     

    ************************************************

     

     

     

     

     

     

  • シニア教室開催 🌻

    犬のはなし 2018年06月29日

     

     

    近年ワンちゃんの高齢化が進み、高齢犬との生活について、

     

     

    悩みやご相談を受ける機会が非常に多くなりました。

     

     

    そこで今回は…

     

     

    シニア犬と快適に過ごすためのヒントになればということで開催された、

     

     

    6月3日(日)の「犬のシニア教室」 の様子をご紹介させていただきます。

     

     

    5組4頭の、ワンちゃんとご家族の皆さんにご参加いただきました。

     

     

    🐶   🐶   🐶   🐶

     

     

    まずはじめに、ワンちゃんの「老化のサイン」について、

     

     

    動画や写真を交えながらご紹介させていただきました。

     

     

    スクリーンショット 2018-06-10 19.21.26

    (認知症の高齢犬の動画 )

     

     

    IMG_2736

    (重度の歯周病の高齢犬の写真)

     

     

    日常で気づくことのできる様々な体や行動の変化について、

     

     

    あらかじめ知っておくことで戸惑うことが少なくなるかと思います。

     

     

    次に、シニアのワンちゃんと快適に暮らすための、

     

     

    準備や工夫などについてお話させていただきました。

     

     

    IMG_3248

     

     

    おはなしの中でご家族の皆さんからは、

     

     

    トイレや食事についてのご相談もいただきました。

     

     

    最後に、ワンちゃんとのスキンシップにもとても良い、

     

     

    ご自宅でできる簡単なマッサージケアについて。

     

     

    IMG_3247

     

     

    実際にマッサージをしている動画を見ながら、

     

     

    皆さんとワンちゃんにもトライしていただきました ♪

     

     

    IMG_3246

     

     

    ワンちゃんたちはとてもリラックスした様子でした。

     

     

    歳をとって寝る時間が長くなるとどうしても

     

     

    触れ合いの時間が少なくなりがちです。

     

     

    日々のスキンシップにも効果的なマッサージを

     

     

    ご自宅でもぜひ続けてあげてください ♬

     

     

     

    🐶   🐶   🐶   🐶

     

     

    次回のシニア教室は秋~冬頃に開催の予定です。

     

     

    ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

     

     

     

    ********************************************************