チャオ通信

  • 尿路結石

    犬のはなし 2018年11月07日

     

     

    <どんな病気?>

     

     

    腎臓で作られた尿は、尿路(腎臓→尿管→膀胱→尿道)を通り、体外へ排出されます。

     

     

    尿路に結石ができる病気が尿路結石症で、人と同様ワンちゃんにも起こる病気です。

     

     

    結石ができる場所によって、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石と呼ばれます。

     

     

    *   *   *   *

     

     

    数日前から元気、食欲がないというワンちゃんが来院されました。

     

     

    身体検査でお腹を触ると腹部が強く張っていて、

     

     

    膀胱の中に大量の尿がたまっている様子で、本人もぐったりしています。

     

     

    排尿したくても自力で尿を出せない状態のようです。

     

     

    尿を抜くために、陰茎の先から膀胱へカテーテル(細い管)を入れますが全く進みません。

     

     

    緊急的にお腹の外側から膀胱に細い針をさして尿を抜きました。

     

     

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    (尿道結石/黄色枠の小さな粒状)

     

     

    レントゲンとエコー検査で、尿道(陰茎から膀胱の間)と膀胱、

     

     

    それぞれに大量の結石が詰まっているのがわかりました。

     

     

    結石によって尿路がふさがってしまうと激しい痛みを伴い、

     

     

    閉塞が長く続くと腎臓の機能にダメージを与えます。

     

     

    また、細菌感染を合併すると高熱がでます。

     

     

    治療としては、外科的に結石を取り除く必要があります。

     

     

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    今回は、膀胱、尿道の一部をそれぞれ切開して、結石を取り除きました。

     

     

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    写真は取り出した結石の一部で、これの倍近い数の結石が、

     

     

    尿道に栓をするような状態でびっしり詰まっていました。

     

     

    これだけ詰まっていたら相当辛かっただろうと思います。

     

     

    幸い手術後は体調もすぐに戻り退院できました。

     

     

    結石は検査センターに提出して、その成分を調べてもらいます。

     

     

    結石の種類によっては、食事やサプリメントでの予防ができる場合もあります。

     

     

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    <結石ができる原因は?>

     

     

    尿路結石症全体のほとんどは原因不明です。

     

     

    尿中のカルシウム、シュウ酸、尿酸などの過剰、

     

     

    結石を抑制する物質(マグネシウム、クエン酸)の減少、

     

     

    尿路感染、尿路奇形、尿の停滞、動物性タンパク質の過剰摂取、水分摂取不足など

     

     

    多くの素因が複雑に関与していると考えられています。

     

     

    水分の摂取量が減る冬場は特に注意が必要です。

     

     

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  • 橈尺骨(とうしゃっこつ)骨折

    犬のはなし 2018年10月05日

     

     

    橈尺骨は肘から手首までの前腕部の骨です。

     

     

    橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)の2本の骨で構成されています。

     

     

    今回は室内で滑ったあとから前足をつけなくなった小型犬のワンちゃんです。

     

     

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    橈尺骨(手首に近い部分)が骨折しているのがわかります。

     

     

    折れた骨が皮膚を突き破ってしまいそうな危険な状態です。

     

     

    夜間に救急外来 で受診されたため、

     

     

    応急的にギプスで固定したのち、手術となりました。

     

     

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    インプラントを使って固定しました。

     

     

    翌日には足をついて少しずつ歩けるようになりました。

     

     

    インプラントは骨の治り具合を見ながら少しずつ外していきます。

     

     

    小型犬(とくにトイプードルなど)の橈骨尺骨は非常に細く、

     

     

    ソファから飛び降りたなどの些細な衝撃でも折れてしまうことがあります。

     

     

    ワンちゃんの骨折のうち、最も頻度が多いのがこの橈尺骨の骨折です。

     

     

    飼い主さんが抱いていて落下したケースも多く注意が必要です。

     

     

     

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  • 股関節脱臼(こかんせつだっきゅう)

    犬のはなし 2018年09月20日

     

     

    股関節は、大腿骨(太ももの骨)の上端にある球状の骨頭(こっとう)が、

     

     

    骨盤の寛骨臼(かんこつきゅう)と呼ばれるソケットにはまるような形をしています。

     

     

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    大腿骨頭が何らかの原因で寛骨臼から外れてしまうのが股関節脱臼です。

     

     

    今回は、ドッグランで遊んでいて突然後ろ足を激しく痛がりだしたワンちゃんです。

     

     

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    (点線枠内が脱臼した股関節)

     

     

    脱臼した股関節を、まずは手で元の状態に整復します。

     

     

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    一度脱臼した股関節は再度脱臼することがあり、手術が必要になることもあります。

     

     

    今回のワンちゃんは一度整復をしたのち、数日で再脱臼をおこしました。

     

     

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    ご家族の希望で大腿骨頭切除という手術を行いました。

     

     

    術後のリハビリは必要ですが、日常生活に不自由なく元気に生活してくれています。

     

     

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  • 乳腺腫瘍(にゅうせんしゅよう)

    犬のはなし 2018年08月01日

     

     

    乳腺にできる腫瘍で、中高齢のメスのワンちゃんに多い病気です。

     

     

    胸やおなかに「しこり」ができます(複数できることも)。

     

     

    悪性の腫瘍であれば、出血や壊死を起こしたり、

     

     

    リンパ節や肺などへ転移する場合もあります。

     

     

    治療は、手術で腫瘍を切除する必要がありますが、

     

     

    悪性の場合には、抗癌剤や放射線治療が必要になることもあります。

     

     

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    写真のワンちゃんは胸から下腹部の広い範囲に、

     

     

    肉眼でもわかる大きなしこりが多数できていました。

     

     

    悪性の乳ガンで、リンパ節にも転移していました。

     

     

    他院で以前から内科治療を受けていたものの良くならず、

     

     

    高齢のため手術もできないと言われ、当院を受診されました。

     

     

    食欲がなく体重と元気も日に日に落ちていたようです。

     

     

    エコー検査で、おなかの中(卵巣)にも大きな腫瘍が見つかりました。

     

     

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    (右の卵巣の腫瘍)

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    (左の卵巣の腫瘍)

     

     

    腫瘍はおなかの中で転移して、腹膜炎をおこしています。

     

     

    ご家族と相談のうえ手術することになりました。

     

     

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    ( 卵巣の腫瘍)

     

     

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    (腸間膜に播種・転移した腫瘍)

     

     

    手術では、おなかの中の腫瘍を卵巣と子宮ごとすべて摘出し、

     

     

    乳ガンは左右両側の乳腺を腫瘍ごとすべて切除しました。

     

     

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    (手術後の様子)

     

     

    10歳を過ぎたワンちゃんですが、よく頑張ってくれました。

     

     

    手術後すぐに食欲は戻り、抗癌剤治療を受けながら、

     

     

    1年以上たった今も元気に生活してくれています。

     

     

    乳腺腫瘍は若いうちに避妊手術をすることで予防のできる腫瘍です。

     

     

    また、仮に腫瘍ができた場合でも「早期発見、早期治療」が大切です。

     

     

     

     

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  • 膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)

    犬のはなし 2018年07月17日

     

     

    膝のお皿(膝蓋骨)が、膝の正面の本来の位置からずれてしまう病気です。

     

     

    後ろ足を曲げたまま地面に着かない(跛行)、

     

     

    突然足をあげてキャンとなく(痛み)などの症状や、

     

     

    ひどい場合には足の形が変形してしまうこともあります。

     

     

    トイプードルやチワワなど小型犬に非常に発生の多い病気です。

     

     

    歩行時に「スキップ」や「ケンケン」するワンちゃんが多いようです。

     

     

    IMG_2656https://youtu.be/soJ9O3-n9aI

     

     

    触診やレントゲン検査などで診断が可能です。

     

     

     

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    (写真;両側の膝蓋骨(赤点線枠)が内側に脱臼している)

     

     

    症状(痛みや跛行)が続く場合には手術をおすすめしています。

     

     

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    (写真右;手術で本来の正面の位置に戻った膝蓋骨)

     

     

    手術は症状や重症度に合わせて上記の手技を組み合わせて行います。

     

     

     

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  • シニア教室開催 🌻

    犬のはなし 2018年06月29日

     

     

    近年ワンちゃんの高齢化が進み、高齢犬との生活について、

     

     

    悩みやご相談を受ける機会が非常に多くなりました。

     

     

    そこで今回は…

     

     

    シニア犬と快適に過ごすためのヒントになればということで開催された、

     

     

    6月3日(日)の「犬のシニア教室」 の様子をご紹介させていただきます。

     

     

    5組4頭の、ワンちゃんとご家族の皆さんにご参加いただきました。

     

     

    🐶   🐶   🐶   🐶

     

     

    まずはじめに、ワンちゃんの「老化のサイン」について、

     

     

    動画や写真を交えながらご紹介させていただきました。

     

     

    スクリーンショット 2018-06-10 19.21.26

    (認知症の高齢犬の動画 )

     

     

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    (重度の歯周病の高齢犬の写真)

     

     

    日常で気づくことのできる様々な体や行動の変化について、

     

     

    あらかじめ知っておくことで戸惑うことが少なくなるかと思います。

     

     

    次に、シニアのワンちゃんと快適に暮らすための、

     

     

    準備や工夫などについてお話させていただきました。

     

     

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    おはなしの中でご家族の皆さんからは、

     

     

    トイレや食事についてのご相談もいただきました。

     

     

    最後に、ワンちゃんとのスキンシップにもとても良い、

     

     

    ご自宅でできる簡単なマッサージケアについて。

     

     

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    実際にマッサージをしている動画を見ながら、

     

     

    皆さんとワンちゃんにもトライしていただきました ♪

     

     

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    ワンちゃんたちはとてもリラックスした様子でした。

     

     

    歳をとって寝る時間が長くなるとどうしても

     

     

    触れ合いの時間が少なくなりがちです。

     

     

    日々のスキンシップにも効果的なマッサージを

     

     

    ご自宅でもぜひ続けてあげてください ♬

     

     

     

    🐶   🐶   🐶   🐶

     

     

    次回のシニア教室は秋~冬頃に開催の予定です。

     

     

    ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

     

     

     

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  • 会陰(えいん)ヘルニア

    犬のはなし 猫のはなし 2018年06月05日

     

     

    お尻のまわり(会陰)の筋肉が薄くなり、筋肉の隙間から、

     

     

    おなかの臓器や脂肪が飛び出す(ヘルニア)病気です。

     

     

    症状はさまざまですが、見た目でお尻のまわりが膨らみます。

     

     

    その他、便や尿が出にくくなるなどの症状もあります。

     

     

     

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    写真のワンちゃんは、お尻の右側がぽこっと膨れています。

     

     

    毛を刈るとよくわかります ↓

     

     

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    ヘルニアは両側に発生することもあります。

     

     

    治療は多くの場合、飛び出した臓器を元に戻し、

     

     

    あいた筋肉の隙間を縫い閉じる手術が必要になります。

     

     

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    (飛び出していた内臓脂肪)

     

     

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    (あいた筋肉の隙間を閉じるところ)

     

     

    この病気の発生には男性ホルモンが影響するため、

     

     

    去勢していない雄のワンちゃんは去勢手術も同時に行います。

     

     

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    (手術後の様子)

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    高齢になって便がしづらいなどの症状が見られた場合は、

     

     

    動物病院を受診されることをおすすめいたします。

     

     

    写真のワンちゃんも手術後は元気に過ごしてくれています。

     

     

     

     

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  • 踵骨(しょうこつ)骨折

    犬のはなし 2018年05月14日

     

     

    踵骨とは「かかと」の骨です。

     

     

    ワンちゃんのかかとは私たち人間のように接地していません。

     

     

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    (矢印の位置がかかと/点線がアキレス腱)

     

     

    今回は、室内で突然足をあげて痛がるというワンちゃんです。

     

     

    主治医の先生のご紹介で来られました。

     

     

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    レントゲン検査で踵骨を骨折していることがわかりました。

     

     

    このままでは歩けませんので手術となりました。

     

     

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    手術後はしばらく安静ですが、骨が治れば日常生活に戻れます。

     

     

    写真のワンちゃんも今は元気に走り回っています。

     

     

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  • 胃拡張-胃捻転(いかくちょういねんてん)症候群

    犬のはなし 2018年05月01日

     

     

    胃が突然 ねじれ(捻転)を起こし、食べた物やガスが胃から流れ出なくなり、

     

     

    過度に胃が膨らむ(拡張)ことで、ショック状態に陥ってしまう病気です。

     

     

    急速に致命的な状態に進行しますので、早急な治療が求められます。

     

     

    今回は食後、急にぐったりして、よだれが止まらない大型犬のワンちゃんです。

     

     

    夜間に救急 で来られました。

     

     

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    (ガスが充満しねじれた胃)

     

     

    はっきりとした原因は不明ですが、大型犬に多く、

     

     

    吐こうとするのに吐けない、よだれなどの症状がみられます。

     

     

    写真のワンちゃんは不整脈も出ており危険な状態でした。

     

     

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    治療は、まず胃の中のガスを抜き、点滴など全身状態を安定化します。

     

     

    次に、手術で胃の捻じれを解除し、再び胃の捻じれが起きないように、

     

     

    胃の一部をおなかの中に縫いつけ、固定します(胃腹壁固定術)。

     

     

    写真のワンちゃんも緊急手術を行い、退院後は元気に生活しています。

     

     

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  • フィラリア予防

    犬のはなし 2018年04月01日

     

     

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    フィラリア症は蚊が媒介する病気です。

     

     

    犬の心臓や肺に寄生虫が住みつき、心不全などを起こす怖い病気です。

     

     

    お薬で予防できますが、もしフィラリアに感染した状態で薬を投与すると、

     

     

    ショック症状を起こすことがあり大変危険です。

     

     

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    (赤線2本が陽性 / 感染あり)

     

     

    写真のワンちゃんは去年の春の検査で陽性がでました。

     

     

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    (血液中に寄生したフィラリアの幼虫)

     

     

    薬の投与し忘れなどによって知らない間に、

     

     

    フィラリアに寄生している、というケースが稀にあります。

     

     

    フィラリア予防の前には検査をお忘れなく。

     

     

    フィラリア検査は数滴の血液で簡単に行えます。

     

     

    予防薬は、錠剤以外にもクッキーやお肉タイプのもの、外用薬などあります。

     

     

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